ショーシャンクの食卓に #20 – 煮物の香りとケモノの視線

昨晩、洗濯ものを干している最中に、台所から流れてきた切干大根と干し椎茸の煮物の香りに、何故だか涙腺が緩んだ。

乾物はサッと洗い、ゆっくりと水で戻し、沈殿したゴミを拾わないよう手でそっと掬い、飛び散らぬようギュウウッと絞る。戻し汁は晒しをひいたザルで濾し、具材と一緒に鍋へ戻す。一旦滲み出た旨味を戻してやるのだ。

切干大根と干し椎茸、それぞれの戻し汁の割合は適当。いつどこでどんな乾物を手に入れるかで、出汁の出方は変わるのだから、厳密に考えたところで仕方がない。具材と戻し汁を、ちょっと口にしてみると、控えめな、しかしれっきとした甘みを感じたから、砂糖は使わない。

落し蓋はしない。戻し汁(出汁)は少々たっぷり目にして、具材に窮屈な思いをさせずにゆっくりと煮含めていく。時間をかけるつもりでいるから、煮ている間に他の家事に取り掛かる。あとは時々混ぜ返すだけでいい。

そんなこんなで、アボット(犬)に見つめられながら洗濯を干していたら、件の香りが鼻先をくすぐくり、途端に涙腺を刺激した。手前味噌で恐縮だが、食材とそれを口にする人を慈しむようにと心がけて作っていた料理から、己が慈しまれているような心地になったのだろうか。単に疲れていたのかもしれない。「なんや知らんが俺を愛でれ」という顔でアボットが見ていた。

背負子 店主

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